不登校児童生徒にかかる情報交換会の報告

7月24日に長野市教育委員会主催の不登校児童生徒にかかる情報交換会に出席したので、報告と共に、私見を述べたい。

今回の情報交換会は3年度目で、今年度としては第1回目の開催となる。これは、長野市が不登校問題に対する支援策を現場の意見を取り入れ、実質的なものとするため行っている。不登校の親の会やフリースクール、スクールソーシャルワーカー、放課後デイサービスなどを運営している代表者などが集まり、長野市の現状把握報告に加えて、教育委員会や関係者同士の情報交換を行う場となっている。

学校、長野市教育委員会、親の会などが一同に集まり、不登校について情報交換をすることは、非常に素晴らしい取り組みだ。今現在不登校で悩んでいるご家族や、もしかしたら将来うちの子が不登校になるかもしれない、と思っている保護者にとって、有意義な情報となるだろう。

【目次】
1.不登校に関する情報交換会の目的と期待する効果
2.長野市の不登校の現状
3.長野市の登校支援策
4.増えてきた民間団体・施設
5.教育委員会の意向の変化
6.本当に不登校支援になっているのだろうか
7.まとめ

1.不登校に関する情報交換会の目的と期待する効果

情報交換会の報告-2

1−1.不登校に関する情報交換会の目的

今回の不登校に関する情報交換会の目的と期待する効果について解説する。

長野市教育委員会の配布資料には、不登校に関する情報交換会の目的について、以下の2つの点を挙げている。

・不登校児童生徒の係る関係者で情報を共有し、「社会的自立」に向けたより良い支援の在り方について学び合う。
・不登校児童生徒への「支援」について、それぞれに立場から感じていることや課題を出し合い、今後の連携の方向性を検討していく。

まず注目すべき点は、「社会的自立」ということだ。今までは「学校に戻ること」が目的だったが、「社会的自立」を目的にしていることだ。教育委員会としても、大きな方向転換だといえるだろう。自立とは、自分で生活するために必要な能力を身につけ、自分で生活を営むことができる、ということだ。ただ、自立という言葉のウラに、自立できない人は「ダメ人間」という社会的な雰囲気があることを忘れてはならない。

次に「支援」ということだが、「良かれと思うからやってあげる」「手伝ってやってあげるよ」という意味が感じられる。これは、パターナリズム(温情主義)だ。不登校問題においては、当事者の同意を得て、寄り添いつつ進む道を決めていくというマターナリズム(母性主義)が適切な考えだ。日本では、障害者問題においてよく使われる「合理的配慮」が近い表現だと感じている。つまり、ひとり一人の状況に合わせて、基本的人権と自由を尊重できるように確保し行使することだ。

1−2.不登校に関する情報交換会への期待する効果

長野市教育委員会では、不登校に関する情報交換会への期待する効果として、以下の3つを挙げている。

・多様な教育の機会を確保し、社会的自立に向けた支援ができる
・個に適したよりよい支援につなげることができる
・学校以外の居場所での活動状況を把握し、児童生徒の頑張りや意欲を評価することにつながる

総合すると、「通常の教室での学習が出来なければ、いろいろな場所で学習してもいいよ」、「一人ひとりに合わせて学習できる場所や機会を紹介するよ」ということになる。しかし、適切な居場所で学習するのだから、頑張ってやる気を出したら良い点数を挙げるよ、という「評価」があることが気になる点だ。心身に傷を負ってしまって、やる気が出ない児童生徒は、やる気が出るまでの間の評価はどうなるのか、また進学を控えている年度においては、低い評価の内申書で受験することになってしまってよいのか、という問題があるだろう。

2.長野市の不登校の現状

長野市の不登校の現状をお伝えする。出展は配布された「長野市長期欠席児童生徒の状況報告書」から抜粋した。速報値として令和4年度には、長野市の不登校の小学生は284人、中学生は525人だ。小学校と中学校合わせて1000人あたりの児童生徒数としては、30.4人だ。3クラスにおよそ3人、つまりクラスにおよそ1人は不登校になっているのが現状だ。
(なお、記事執筆時、長野市のホームページにはこの状況報告書は公開されていなかったので、公開されているのであれば、コメントで教えてほしい)

情報交換会の報告-3

この状況報告書によると、長野市における不登校の要因は上記のグラフにようになっている。これは学校にアンケートを行った結果(複数回答)で小中合わせて、トップ4は、次のようになっている。
①無気力・不安(約50%)
②学業の不振(約25%)
③親子の関わり方(約25%)
④いじめを除く友人関係をめぐる問題(約16%)

なお、いじめは1%以下という結果だ。これは、全国的にもほぼ同じ傾向を示している。

出典:文部科学省の「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題」
https://www.mext.go.jp/content/20221021-mxt_jidou02-100002753_1.pdf

情報交換会の報告-4

文部科学省では、学校への調査ではなく、不登校児童生徒に対する実態調査を行っている。この調査によると、不登校児童生徒に対して「最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ」として、以下が挙げられている。
・先生のこと
・自分でもわからない
・体の不調
・友達のこと(いじめ)
・友達のこと(いじめ以外)
・勉強がわからない
・生活リズム(朝起きられない等)

出典:令和2年度不登校児童生徒の実態調査
https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318-2.pdf

つまり、不登校の要因として、学校側と児童生徒側ではかなりの違いがある。また、不登校になる要因は多岐にわたっているとともに、4つ以上の要因が重なって不登校になっていると感じている。特に、要因が「自分でもわからない」ということは、自分自身の「情動」がはっきりしないまたは、言葉で表せない状態うちに、体調の変化が現れることがある、と考えられる。
また、この両方のアンケート調査には、本来の要因と二次的、三次的な要因が含まれていることを加味する必要があるだろう。

情動(emotion)
感情の一種であり、急激に生起し短期間で終始する反応振幅の大きい一過性の感情状態。気分(mood)は中長期的にゆるやかに持続する感情とされる。主として、恐怖、不安、怒りなどがある

心理学用語の学習より抜粋:https://psychologist.x0.com/terms/132.html

3.長野市の登校支援策

長野市の不登校支援策としては、文部科学省の「COCOLOプラン」に従って行っている。今回はこのプランの「多様な学びの場・居場所を確保」の中で、以下の2点について重点的に取組むとのことになる。

文部科学省COCOLOプラン:https://www.mext.go.jp/content/20230418-mxt_jidou02-000028870-cc.pdf

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

長野市の「多様な学びの場、居場所を確保」について
1.社会的自立に向けて連続した学習ができるよう、学校や教育委員会とNPOやフリースクール等との連携を強化します
2.不登校の児童生徒の学びの場として、夜間中学を活用するとともに、多様な居場所として公民館、図書館等の社会教育施設を活用します
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さらに詳しくみて、解説していこう。

3−1.新たな不登校を生まない校内体制づくり

この新たな不登校を生まない校内体制づくりとして、5つを挙げている。この「生まない」という表現には違和感があるとの出席者からの意見があった。たしかに、「不登校を生まない」という表現は、消極的であり、不登校のみに限定されている感じがする。不登校でなくても、それぞれの学び方や進度は違って当たり前で、その中で人間関係や耐力を少しづつ養っていくことになるからだ。例えば、「魅力ある学校の体制づくり」としたほうが良いかと思っている。

①子どもが活躍できる魅力ある授業づくり
この魅力ある授業づくりとして、”「自学自習の資質能力」の伸長に向けた授業改善”と記載している。自分で学習できる力を育てるためには、一斉授業ではなくタブレットなどを使用し、それぞれにマッチした学習ができるようにしてほしい。すでに実施している学校もあるが、子ども以上にデジタルスキルを持っている教職員が少ないことが気になっている。

②組織的なチーム支援体制の構築
組織的なチーム支援体制の構築には、「登校支援プランシート」の活用としている。結局、シートを書いたり、チェック、報告などが追加になり、教職員の負担が増えることにならないかが心配だ。

③小さなSOSを見逃さない学校体制づくり
小さなSOSを見逃さない学校体制づくりには、一人一台端末をつかった「相談フォーム」の活用があり、良い取組みだ。相談フォームに書いて送ることは対面での相談と比べて、気軽に相談できるだろう。
しかし、誰が受け手になり、誰が返信するのか、ということが問題だ。学校内の教職員が受け手であれば、担当教員や校長など学校内での共有事項になってしまう。すると、そのうち「相談フォームに書いた内容がみんな知っている」や、「先生に呼ばれて変な噂が広まった」、という事態になりかねないようにしてほしい。スクールカウンセラーやSSW(ソーシャルスキルワーカー)等が対応できるとよいだろう。

④校内別室の充実
校内別室への登校は、不登校になる直前の行動形態になるので、非常に重要な取組みになる。校内別室の数を増やしたり、別室での学習を支援することは良いだろう。また、校内別室では、児童生徒がスクールカウンセラーに、個別に相談できる体制が必要であろう。

⑤小中連携移行支援の充実(中小連携、学級編成等)
小中連携移行支援の充実には、小学校から中学校に移行する際のいわゆる「中1ギャップ」を防止する意味あいがあると思う。特に、発達障害やダウン症を含む知的障害を持つ児童等については、可能な限り保護者も含めた十分な支援の移行が必要だ。ただ、不登校児童に「○○さんはこんな特徴がある」と伝えてしまうと、ステレオタイプ(固定概念)までもが移行され、中学生になった生徒の成長を抑えてしまう可能性があるので、注意が必要だ。

3−2.長野市版スクリーニング会議の結果を踏まえた支援の充実

スクリーニング会議とは、どのような会議を指しているのか不明だ。その会議においては、途中経過も含めた議事録と政策等の公開が必要だろう。

①スクリーニング会議の効率化
このスクリーニング会議の効率化は、「会議をスムーズに進める」だけの施策で、当たり前のことだ。このような会議に言えることだが、限られたメンバーだけが発言や議論をして、他のメンバーは聞いているだけでは、意味がない。少数意見を尊重しながらも、最終的な合意をまとめていくことが必要だ。不登校問題は、現代の非常に複雑に絡み合った問題であり、縦割り行政では対応困難な場合が多く存在する。ただ、会議が増えてしまって、外部団体や学校の教職員の負担が増えないようにしてほしい。

②小・中学校のスクリーニング会議にSSWを派遣
「スクリーニング会議にSSWを派遣」とあるが、会議だけではなく、それぞれの学校に常駐または一週間に2日以上の勤務が必要だと思う。SSWと限定するのではなく、スクールカウンセラーや臨床心理士、公認心理師、精神科医などの専門家の派遣も検討してほしい。

③SSWによる学校相談派遣の充実【新規】
上記のように、SSWによる学校相談派遣は、「SSWを会議参加や相談を増やしましょう」ということで、よい取組みだと思う。繰り返しになるが、スクールカウンセラーやスクールカウンセラー等には、学校に常駐できるような体制が欲しいところだ。または、LINEなどのSNSを利用した相談も同時に行うことで、対面で会ったカウンセラーとSNSを通じてリアルタイムでの相談は、情動が激しい子どもたちにとって、心強い味方になってくれるだろう。

④個別支援会議の充実
個別支援会議の充実は、「支援策と短期目標」を定め、保護者と合意形成を図ることになっている。学校と保護者の対話は良い取り組みだ。しかし、これは最終的には再登校を促す目標とならないように注意が必要だ。できれば、親の会やSSWなどが同席し、より具体的で効果的な対応ができればよいだろう。保護者としては、「とりあえず、見守りましょう」は聞き飽きているので、具体的にどうしたらよいのか?をしっかりと決め、学校は子どもの心の傷が深くならないように支援をしてほしい。

ただし、短期目標を決めることには賛成できない。それは、人の心を癒すのに、いつまでに、どのような状態にしましょう、とは絶対にできないからだ。保護者としては「中学2年の夏までには登校できるようにしよう」などと目標設定をしたがるが意味がないことだ。人は人として、不可思議な存在であって、工業製品ではないからだ。それに、目標達成できそうもない場合には、関係者(保護者)の絶望感や挫折感などが増大し、親子共々メンタルサポートが必要になってくるだろう。

3−3.多様な居場所における支援の充実

長野市では、現在7カ所の教育支援センターがあり、令和6年にはSaSaLAND(七二会)が開校する予定だ。これは、スクールバスも含め、すべて無料で、出席扱いとなる。詳細は、長野市のHPを参照してほしい。
https://www.city.nagano.nagano.jp/n601000/kosodate/p001546.html

多様な居場所における支援の充実案としては、以下がある。

①既存の教育センターでの支援の充実
②かがやき教育支援センターの再開
③進路相談や学習支援の充実
④SaSaLAND開設にむけた取組み
⑤民間施設どの連携推進および学校以外の居場所の周知
⑥学校以外の居場所における学びと評価の充実

どの施策も「居場所をたくさん作ったから、いろいろ選べるよ」「相談も出来るよ」ということなので、評価できる。ただ、不登校になってから「自分に合うところを探しなさい」というのは、当人や保護者にとっても負担が大きすぎる。学校と教育委員会とともに、外部施設や団体の場所や特徴を把握し、その子どもにマッチした居場所をいくつか推薦することが必要だ。その後は、その団体等と連絡を取り合い、信頼関係を築き、出席扱いや学習進捗、内申書等について協議していくことが必要だろう。

また、自宅にずっと居て外に出たくないという児童生徒に対しての支援策がほとんど盛り込まれていない。不登校のの子どもたちの91.3%が自宅に過ごしている、という統計データがある。

統計データ:NPO法人 登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク(2023年3月発行)

不登校を持つ親の全国アンケート:https://futoko-net.org/2023/05/15/300/

4.増えてきた民間団体・施設

情報交換会の報告-6

長野市では、不登校に関する相談や居場所として情報を提供している。長野市のホームページには、「学校以外の子ども居場所/施設・団体一覧」として、公開している。ここには、不登校の親の会、フリースクール、学習支援、通信制高校、放課後デイサービス、医療機関の情報が掲載されている。ここに掲載されているのは19団体と増えており、選択肢の幅は広がっている。

松代校は、「フリースクール未来」のグループ校として掲載されているので、確認してほしい。
https://www.city.nagano.nagano.jp/documents/726/082306.pdf

なお、須坂市では、子どもの居場所としては、相森中学校の敷地内にフレンドリールーム(中間教室)がある。
https://www.city.suzaka.nagano.jp/contents/faq/answer.php?id=691

千曲市では、不登校児童生徒への支援として、市内5か所に教育支援センター(中間教室)がある。

5.教育委員会の意向の変化

情報交換会の報告-7

近年、長野市教育委員会は、不登校問題に対する施策をかなり積極的に進めている。今年度の大きなイベントとしては、11月11日にふれあい福祉センターで行われる「ながの育ちと学びの場フォーラム 〜学校以外の居場所説明会〜」がある。このイベントは昨年度に初めて開催され、今年度で2回目となる。(執筆時、まだ募集はしていない)

他には、10月28日にふれあい福祉センターで、西野博之氏の講演がある。定員は150名程度としている。川崎市において、夢パークの代表を長年続けてきた専門家でもある。

川崎市夢パーク:https://www.yumepark.net/

西野博之:認定NPO法人フリースペースたまりば 理事長、川崎市子ども夢パーク・フリースペースえん等の各事業総合アドバイザー。2022年川崎市子どもの夢パークのドキュメンタリー映画「ゆめパのじかん」が公開。

以上のように、長野市教育委員会としては不登校対策のイベントや情報公開によって、不登校にならないような予防対策や不登校になっている児童生徒の対する相談や居場所の確保を積極的に進めていることがわかる。

6.本当に不登校対策になっているのだろうか

情報交換会の報告^8

今回の不登校児童生徒にかかる情報交換会について、ここまで紹介してきたのだが、本当に不登校対策になっているのだろうか、という考察を述べておきたい。

6−1.不登校に関するデータの違い

文部科学省による「不登校の要因」のデータは、学校に対しての調査と児童生徒に対しての調査では、かなりの点が違っている。特に、いじめに関する意識がずいぶん違っている。これは、「いじめ」が学校と当事者では認識が異なっていることだと考えている。いじめ防止対策推進法においての「いじめ」の定義を簡単に言えば、「学校内外を問わず、いじめられた児童生徒が心身の苦痛を感じること」だ。

つまり、どんなにいつも使う言葉や態度でも、当人が苦痛と感じたら「いじめ」ということになる。さらに、学校内などで、他のだれかがいじめられていることを見ることで「苦痛」を感じたら、教室や学校という場所がいじめているので、「いじめ」である可能性がある。

さらに、児童生徒間のいじめは、複雑で陰湿なものになっている。親友からの無視や疎外、学校ヒエラルキーの頂点からの引きずり下ろし、仲間入りの強要、友人の仮面はがし、性的認識のいやがらせ、同和的差別、人種差別、ネットや仮想空間でのいじめなど、外部からはほとんど認識できなくなっていることを理解していかなくてはならない。また、教職員からの何気ない一言が「いじめ」になる可能性がある。

いじめの定義:いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)
第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

6-2.保護者への配慮不足

情報交換会の報告-9

不登校は、当人が一番つらい経験だが、その保護者も悩み、苦しんでいる。不登校の親の会「ブルースカイ」は、長野市において「親の会」と「会報の発行」を毎月33年以上も続けており、会報は2023年7月で第344号にもなる。内容は、不登校の当人や保護者の体験談、不登校関連の新聞や雑誌の切り抜きなど毎号20ページ以上にもなっている。「ブルースカイ」は、不登校の当人や保護者の心の支えとなる大切な場所だ。長年にわたって活動を続けてきた「ブルースカイ」の活動は、本当に多くの不登校の保護者を救ってきた。

「ブルースカイ」のような親の会には、同じ経験をもつ先輩の親たちが、保護者の悩みを真剣に聞いてくれるばかりでなく、長年の経験や知識に基づく的確な心構えも得られる。さらに、保護者が変わっていくことで、子どもたちも徐々に良い方向へと変わっていく。子どもへの声掛けや態度、夫婦仲の改善、学校との付き合い方、兄弟や友だちとの関係、発達障害の疑い、ゲームやスマホ依存、昼夜逆転、学習進度など、保護者にとって不安だらけなのだ。

「ブルースカイ」のような親の会や、その他の支援団体、専門家による支援を受けることで、不登校から立ち直ることはできる。子どもや保護者の方は、一人で悩まずに、ぜひ支援機関に相談してほしいし、行政も総合的な支援が必要だ。

ブルースカイ(公益財団法人社会貢献支援財団 第50回社会貢献表彰)
https://www.fesco.or.jp/winner/h30_50/winner.php?wid=12372

6-3.自宅に引きこもっている児童生徒の対策不足

不登校の子どもが主に過ごしている場所としては、91.3%が自宅になっている。(出典:不登校を持つ親の全国アンケート:NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク)

不登校になって、主として教育支援センターやフリースクールに通っている児童生徒は非常に少ない。多くは自宅でゲームやYoutubeなどを見て過ごしており、自室からもほとんど出ないで過ごしている。このような児童生徒に対しての支援策がない。学校の担任教員などが家庭を訪問することもできるが、膨大な時間ときめ細やかな配慮が必要なので、負担が大きすぎるからだ。

最近では、引きこもりをほぼ強制的に寮などに連れていく自立支援団体、いわゆる「引き出し屋」がある。一部の引き出し屋には、悪徳な業者もいるので注意したほうが良いだろう。私の意見として、引き出し屋は、違法はもちろんのこと、合法であっても、おすすめはしない。ひきこもりという心理的に複雑な状況におかれている児童・生徒・若者に対して、「自室を出ること」を前提として、ほぼ強制的に連れ出すことは、非常に違和感を感じている。ただし、長年にわたるの保護者の苦しみと絶望感は理解する必要がある。

情報交換会の報告-10


では、どのような支援が可能かというと、フィンランド発祥の「オープンダイアログ」という方法がある。詳細については別記事にするが、簡単に言うと、本人とその関係者、精神科医、看護師、ソーシャルワーカーが「本人宅」に集まって、「会話を続けていくこと」だ。1週間に一度程度、60分から90分間、何かしらの話を続ける。ある簡単なルールに従って、話を続けることだけで、本人が変わっていく。これを行うには、精神科医とその他6人以上の協力が必要になってくるので、現在の保険医療の範囲を超えているし、時間調整だけでも大変な労力が必要となるだろう。しかし、精神科医または臨床心理士などの専門家の確保とその他の費用が捻出できれば可能となる。

出典:オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン
https://www.opendialogue.jp/

6-4.閉校に伴うメンタルサポート

長野市においても児童生徒数が減り、閉校する小学校が増えている。心配なのは、児童生徒と関係者のメンタルサポートだ。転校する児童生徒、受け入れ側の児童生徒、双方の教職員、保護者のメンタルサポートについて、何も対策がない。転校する児童生徒は非常に大きなストレスを抱えることになる。学習進度、通学時間や通学体制、学級ヒエラルキー、友人との関係、差別や疎外感など、大きなストレスを感じるタイミングとなる。スクールカウンセラーやSSW、臨床心理士などの専門家が必要であろう。

また、従来の学区制も見直し、全長野市と近隣の市町村との学区制も含めた協働も必要になってくるだろう。

7.まとめ

情報交換会の報告-11

不登校児童生徒にかかる情報交換会について、以下のように報告と私見を述べた。

1.不登校に関する情報交換会の目的と期待する効果
2.長野市の不登校の現状
3.長野市の登校支援策
4.多様な居場所の充実
5.増えてきた民間団体・施設
6.教育委員会の意向の変化
7.本当に不登校支援になっているのだろうか

これら多くの施策は長野市の教育委員会として、素晴らしい取り組みと感じている。もちろん、行政だけでは、まかないきれない部分は残されているので、民間団体等に協力を要請することも必要だろう。また、今回の情報交換会の私見として、不登校に関するデータの違い、保護者への配慮不足、自宅に引きこもっている児童生徒の対策不足、閉校に伴うメンタルサポートを挙げた。

以上「不登校児童生徒にかかる情報交換会」と題して、解説と意見を述べた。行政の方や不登校で悩む保護者の方にとって、少しでもお役に立てれば嬉しいかぎりだ。